東洋医学(中医学)は3千年以上の歴史を有する医学です。科学的理解を前提とする西洋医学とは異なり、病態・病因の追求よりは、病人に対する最適の治療法を優先的に考えていくのです。古代から伝えられており、豊富な臨床経験や中国伝統文化を基にした医学体系で独特な治療法を持つ伝統的な医学です。西洋医学だけでは得られないすばらしい治療効果が得られることがあります。勿論、西洋医学はすばらしい医学ではあることは間違いありませんが、東洋医学をプラスすることによって、更に飛躍した新しい医療が生まれ、患者さんのQOLの向上のために大いに役立つようになることが確信できます。ここで東洋医学の特徴をいくつか取り上げてみます。
◎東洋医学を生み出した思想的特徴
◎人と自然についての見方
人は生きていくために必要な食物も空気も,すべて自然界に頼っている。これはすべて,天と地の産物である。このことから人間の生命活動の源泉は,天と地からなる大自然(大宇宙)にあるということができる.このことを「黄帝内経・霊枢」は,「人と天地は相応ずるなり」といい,また「素問」では,「天は人を食なうに五気を以てし,地は人を食なうに五味を以てす」といっている。いずれも「気の思想」や,「天人合一思想」,「天地人三才思想」に基づいている。
◎東洋医学の特徴的な思想
天人合一思想 | 人(人間・小宇宙)の形と機能とが、天(自然界・大宇 宙)と 相応していると見る思想。 |
天地人三才思想 | 天の陽気と地の陰気とが調和することによって、人の気 が生成されるとする思想。 |
心身 一如 | 人の心と、身体とは互いに影響しているという考え方。 現代医学の精神・身体二元論に対して、心と体は相互に密接に関連しているものとして捉え、体だけでなく心も一緒に治ていく。 心を治すことによって体がよくなり、体を良くすることに よって心もよくなる。心身全体の調和・向上こそが治療の目標です |
未病治 | 本格的な病になる前に対処しようとする考え方。 |
※天地人三才思想とは
「天」の陽気と「地」の陰気とが調和することによって、「人」の気が生成されるとする思想。
天:上部、浅い位置・・・天の陽気と感応
人:中部、中位の深さ・・・天地陰陽の中和の気と感応
地:下部、深い位置・・・地の陰気と感応
三才の概念は、人体の三焦理論、脉診法、刺鍼の深さなどに関係している。