陰陽論は、東洋医学の理論の中で最も基本的な理論になります。その理論とは「万物は対立した性質をもつ2つの要素にわけることができる」というものです。そしてその2つの要素というのが「陰」と「陽」の2つになります。
例えば、陰である夜の月と、陽である昼の太陽などがその例です。
陰は静かで暗く、冷たい状態を象徴し、その本質は内向きの力が働く凝集の性質となります。
一方、陽は動的で明るく、熱い状態を象徴し、その本質は外向きの力が働く拡散の性質になります。人間では休養、睡眠などの静の活動が陰にあたり、活動、興奮などの動の活動が陽にあたります。
陰陽論では、生物はこの陰陽が流動的に変化しながら、バランスを保っており、このバランスが崩れると、体に不調が生じるという考え方です。さらに陰陽の運動は、万物を生み出す原動力であるとされています。つまり、陰陽の運動の消失は死を意味します。
以下に陰陽の性質をまとめます。
陽の性質 | 陰の性質 |
・外に向かう | ・内に集まる |
陰陽論を医学に応用する
陰陽論は地球中におけるさまざまな現象の説明にも使われますが、人体の組織構造や生理機能、病気の発生や進行の説明、診断や治療の決定などにも応用されます。
◎組織構造
すべての人体組織は陰と陽の対立した部分に分けることができます。例えば体腔より内、腹、臓は陰であり、体腔より外、背中、腑は陽であるとされます。
このように人体組織は、上下、内外、表裏、前後の各部分で陰陽の対立と統一が存在します。
ちなみに臓とは肝、心、脾、肺、腎の5臓を指し、腑とは胆、胃、大腸、小腸、膀胱、三焦の6腑を指します。このことに関しては、蔵相学説にてまた説明します。
◎人体の生理機能
機能は陽であり、物質は陰であります。人体の生理活動は物質に基づいており、物質の運動がなければ生理機能は起こりません。そして逆に、生理活動の結果として、物質の新陳代謝が行われます。
このように、機能と物質の関係においても陰陽が互いに依存し、影響し合います。つまり、陰陽が互いを利用できなくなり、分離してしまえば人の命も終わってしまいます。
◎病理的変化
陰陽はお互いに影響を与え、一方が強くなるともう一方は弱くなります。そして、ある病理的な変化はこのような相互作用によって起こる、陰陽のバランスの崩れによって説明されます。
陰陽のどちらかが過剰になり過ぎても、過少になり過ぎても病気になり、病理的変化が起こります。ほとんどの病理的変化は、このように陰陽どちらかの過剰か、過少によって説明されます。これは、疾病の病理的変化がいかに複雑であっても、すべて陰陽のバランスの崩れによって説明できることを意味しています。
◎診断
先ほど述べたように、病気の発生と進行は、どんな病気であれ陰陽のバランスの崩れで説明ができます。東洋医学の診断では、最初に陰と陽に分けることによってその病気の本質を知り、複雑な症状を分かりやすくします。
また、全体を陰陽で大きくまとめるだけでなく、診察の結果を細かく分析するためにも使われます。例えば、顔色や脈など望・聞・問・切などの四診も結果を陰陽によって細かく分けられています。
望とは視診、聞とは聴診、問は問診、切は触診など実際に体に触れる検査のことを指します。基本的に診断は、この四診の結果を総合して行われます。
◎治療
この陰陽論を用いた診断は、そのまま治療にも応用します。その応用方法は簡単です。陰陽論では病気が発生し、進行する根本原因は陰陽のバランスの崩れだとしています。そのため、陰陽で不足している分を補い、余っている分を捨てるといった方法でバランスの調整を行います。