東洋医学では
腰痛の原因
腰部は「腎の府」といわれ、足少陰腎経の流れが「脊を貫き腎に属している」ので、本病症は腎と密接な関係にある。臨床では、実症と虚証に大別する。外邪や外傷による急性腰痛は実証のものが多く、腎虚による慢性腰痛は虚証に属する。 主に以下の4つのタイプがあります。
1.寒湿による腰痛 寒冷や湿気の多い環境に居住したり、水に濡れたりすると、寒湿の邪気が身体に侵入する。この寒湿の邪が腰部経絡の気血の運行を阻害すると腰痛が引き起る。
2.湿熱による腰痛 油こい物、甘味・辛味の物の過食により湿熱が生じる(内湿)。また、梅雨など湿気が高い季節には外部の湿熱を感受しやすいために内外の湿熱が腰部の経絡に滞る、気血運行を障害すると腰痛が生じる。
3.血による腰痛(内臓の腫瘍はこのタイプに属している) 腰部の使いすぎや打撲などの外傷により、腰部に経絡を損傷して血が形成されると腰痛が起る。
4.腎虚による腰痛 老化、房事過多等により腎精を消耗して精血不足となり、腰部の経脈を栄養できなくなると腰痛が起る。また、腰は腎の府である。腰部の過労など腎気を損傷し腎陽虚になると、腰部筋脈を温めて養うことができず腰痛が起る。
腰痛の症状―タイプ別
タイプ | 症 状 | 舌象 脈象 |
寒湿 | 腰部が重く冷たく痛む、局部を冷す と増悪、または 雨天と寒冷時に増悪 温めると軽減 | 舌苔白 脈沈遅緊 |
湿熱 | 腰部が重く、熱感を伴って痛む、局 部加温による 増悪、または雨天時 増悪。体がだるい、四肢が重い | 舌質紅苔黄 脈濡数 |
お血 | 腰部の刺痛(針に刺されたような痛み) 疼痛部位 の固定、活動制限、腰部を揉 み温めると軽減、痛み が夜に増強する 著明な圧痛点 | 舌質紫暗 またはお血斑 脈沈渋 |
腎虚 | 経過が長い腰部鈍痛、腰部の冷え、 腰部を揉み温め ると軽減(喜按、 喜温)、膝・両下肢の無力感、疲労 による増悪、精神疲労 | 舌質淡 苔薄白、 脈細無力 |
腰痛の鍼灸治療―タイプ別
タイプ | 治 療 原 則 | 取穴 |
寒湿 | 散寒除湿、通絡止痛(寒邪を散し、湿邪を除く ことにより、局部の気血の流れを改善し、痛み を止める) | 腎兪など |
湿熱 | 清熱除湿、通絡止痛(熱邪を清め湿邪を除去す ることにより、局部気血の流れを改善し、痛み を止める) | 委中など |
お血 | 活血行気、、止痛化お(血液循環を促進し、 気の巡りを改善し、お血を除去することにより 痛みを止める) | 血海など |
腎虚 | 温補腎陽、強腰止痛(腎陽を補う、腰を強く することにより、痛みを止める) |
命門など |
当院には腰痛の鍼灸治療による痛みが全く無くなり再発もしてない例が結構あります。そのメカリズムは鍼灸特有の鎮痛作用を利用し、腰部や坐骨神経の通路のツボに鍼を打つことによって、その刺激が脳や脊髄といった中枢経路を経て、エンドルフィン、エンケファリン等の鎮痛物質を分泌させ、痛みが和らげられることにより腰痛症状が最善されるのではないかと考えられます。